加茂先生勉強会

 2021年5月『Minimalist Social Work の理論と技法』』が相川書房より出版されました。その内容を学ぶため、加茂先生に月1回の勉強会をお願いしました。皆さんにもお知らせさせていただきます。

2022.02.22

(1)ミニマリスト・ソーシャルワークの思想

・クライアントに「その場面のことを詳しくお聞きしてもいいですか?」と支援者が聞くことによって、クライアントの語りは「対自的」なものになる。(※対自的とは、自分と対象を分けた状態。観察するものと観察されるものに分かれた状態。)

・対自的な語りに変化する過程は、「私」と「生活社会」を生み出す過程でもある。

・生み出された「私」や「生活社会」を土台に、支援者が差異化を促す質問をする。

・クライアントは支援者の質問に触発されて、新しい「私」や「生活社会」についての記述を始め、既存の生活様式の変容の可能性が生まれる。

・支援者は、新しく生まれた変容の可能性(解決行動のプラン)をクライアントが日常生活で実践するよう励ます。

・支援者は、クライアントからその実践の様子を詳しく聞く。クライアントは自身の実践を「対自的」に語る。

以下、上記の作業が繰り返されることで、クライアントの生活様式は差異化を続ける。

上記、「私と私の世界の生成と語りの即時・対自過程の力学」「差異による世界の生成」(ここでは説明してないけど「存在論」「認識論」)は支援の思想である。

(2)実践論

・言語行為論、意味論、意味構成規則と行為選択規則を軸とした社会概念

・評定論、変容論、効果測定論

(3)支援者のスキル

・質問 

2022.01.25

(1)逐語録を分析枠に入れる(仮説)。

a「〇〇よね」(相手の行為)

Ef(cR+rRn1) … 相手は自分を〇〇する人間だと思っている。なので、私にそれを

          期待する。

PLA … 相手のメッセージは私に対する「命令」である

rRn2 … 命令には従うしかない

Pref … 〇〇するしかない。〇〇するべきだ。

Praf … 「〇〇する」と言い、すぐに〇〇し始める。

      (不満を示すなどの余計なことはしない)

a「〇〇するよ」(自分の行為の実行)

(2)ロールプレイ

 

2021.12.14

相互作用過程の分析枠

 人間関係の仕分け法。刺激ー反応という単純な相互作用ではない。

 先行情報(予測の部分)は現実を作る強い構えとなる。枠組みに入れることで構造と力学を整理。

□Prafを文脈とした「私の行為選択」

□cRとrRn1を文脈とした「相手の意味構成の予測」

□相手の行為選択法の予測

□相手のPrafを文脈とした「相手の行為」

□…(手持ちのデータから未来の出来事全体を予測する力学)

 

2021.11.09

(1)PLAについて

 自分の行為に対する他者の反応について、意味構成の規則と行為に関するリダンダントな規則(rRn1)が結びつき、「こういう意味だ」と純化した結果がPLAである。実際に見聞きした相手の反応に対し、単純に意味をつけているのではなく、これまでに培ってきたリダンダントなパターンがPLAの生成に強く影響を与える。

(2)実際の質問メッセージ

「いつもこうされるんですか?」(行為選択のルールを探る)

「あなたがこうしたらどうなりますか?」(相手の反応に対する予測を探る)

「相手がこうしたらどうなりますか?」(相手への行為選択に対する予測を探る)

「この時やったことをもう少し考えてみましょうか?」(吟味を促す)

 

2021.10.19

(1)リダンダンシーについて

① リダンダンシーは「一連の行為が提示されたのちに、次はこれが生じるに違いない」「生じるはずだ」という思い込み。推測。

② 出来事レベルでも、「今〇〇が起こった。次は〇〇が起こるに違いない」「きっと怒るはずだ」と予測する。

③ 人は「はっきりする部分」と「カオスの部分」を含んで、現実を見る。「はっきりする部分」は見聞きした具体的な部分。「カオスの部分」は推測や予見などの抽象的な部分(リダンダンシー)。カオスな部分がないとコミュニケーションは展開しない。リダンダントなパターンが高い確率で認識できるとコミュニケーションシステムは安定する(硬直したリダンダンシー)。パターンが崩れ、ランダムになれば、システムは不安定となる(リダンダントを変えるリダンダンシー)。

④ 「はっきりする部分」が固いと字義的になる。「カオスの部分」が固いと思い込みで考えたり、動いたりする。

(2)リダンダンシーの拘束力

 「自分がこうしたら相手はこうするに違いない」、「相手がこうしたら自分はこうするしかない」という自分の行為と相手の反応(相手の行為と自分の反応)に関する規則は、リダンダントな性質を持ち、意味構成や行為選択の先行力となる。

 

2021.09.26

自己決定について

 バイスティックは、人間を「神に似せて作られた存在なので理性的」として、意味づけており、ゆえに「自己決定すべきである」「自己決定を尊重すべきである」と原則化した。その理屈に立てば、見る主体である「私」と見られる対象である「世界」は二極化する。

 しかし、『Minimalist Social Work』の理論では、「私」を実在するものと定義せず、クライアントが自身の世界観を語る時に便宜的に使用するものとしている。さらに言うなら、クライアントに「私」を使って考えさせたり、記述させたりし、クライアントを対自的に対象世界を吟味する立場に立たせることで、変容力を高める、

 自己決定とは、実存する私が私の理性によって何かを決めることではなく、「私」という立場を使い、「私とその世界の関係性」を語る作業を通して主体と世界を分け、自分と世界との関係を作り直す作業と言える。

 

2021.08.26

(1)記号の説明

 CMM理論の記号は学んでいましたが、言語行為論に関係する部分が全く空白だったので、ILA、LA、PLAについて解説を受けました。メッセージ=行為(a)は、内容と間接的に示す他者への意図が含まれます。内容は言語メッセージで示されることが多く、間接的な意図は非言語メッセージに示されます。例えば、「しょうゆ」と言いながら手を伸ばせば、「しょうゆを取ってほしい」というメッセージになります。言語で示される内容メッセージがLA、非言語で示される間接的な意図がILA、となります。ただ人のコミュニケーションのややこしいのは、非言語でも内容を示すことがあります。その場合は、内容メッセージもILA、間接的な意図もILA、になります。

 PLAは、CMMでいうところの(m)です。他者の行為に対し「〇〇である」とその局面で構成された意味です。

(2)サーキュラークエスチョンの「サーキュラー」について

①トラッキングの循環性 … 二者間のフィードバックループ

②意味構成の循環性 … 意味の重層構造による意味と規則の生成力学(構造を循環)

③世界構成の循環性 … 加工構成された解決行動を実際の日常生活場面に投入し、その結果を再吟味する過程で再度加工、現実世界に投入、再吟味… の循環性

2021.07.04

(1)記号の説明(CMM理論)

・Pref … ~するしかない、~するのが正しい、などある特定の行為を押す力。

・Ef … 行為者に意味づけられた結果。(結果とは意味づけ)

・Praf + Rn … Rnは期待や要求(こんな反応を返してほしい)の仕方を表すルール。ある行為を特有のやり方で行うよう働く力をPrafとするが、期待や要求を含まない行為はないので、セットとして考えられる。

※EfとPLAの違いについて

 EfはCMM理論、PLAは言語行為論。相手の反応を「~だ」と構成したもの(m)。

 

(2)rRn

 行動のパターン。自分と他者とのやりとりを切り取る特有のルール(特有の意味構成法)。「相手がこうすると、自分はこうするしかない」という切り取り方と、「自分がこうすると、相手はこうするに違いない」という切り取り方。

 自分の行為選択の予測と、相手の行為選択の予測、つまりリダンダンシーがパターン(規則)を生む。

 

※CMM理論 … アメリカのPearceとCronenが1970年代に開発したコミュニケーション理論。コミュニケーションを行う人間同士は、社会的ルールに照らしてメッセージを解釈し意味を生成させるが、その過程は相互に作用しあい、発話の意味が協応調整される(Coodinated Manegement)とした。協応調整とは、相手の意図を自分なりに理解し、その理解を相手に伝えるべく、自分の発話を協応し、調整すること。

 ペアスとクロネンらは、会話の言外の意味を明らかにすることで、会話の参加者が、自身でも気づいていない発話の意味を認識し、自らの発話を協応調整して、うまくコミュニケーションを成立させられるように支援しようと考えた。

 発話の意味は文脈に左右されることや、コミュニケーションは常に複数の文脈において発生することから、意味構成の階層モデルを示した。言語や非言語メッセージに表される明示的な意味だけでなく、「誰が誰に向かって」や「どのような状況で」や「何を意図として」や「どのような文化的枠組みの中で」など、複数の意味階層が言外の意味に含まれていることを、1~8の階層で示した。