クリニカルソーシャルワーク勉強会のご報告

2014年12月7日(日) 技法選択の2回目です。

 前回に引き続き、問題状況に変容を引き起こし、クライアントが具体的な解決行動を実行できるまで面接相談を展開させる技法選択について、『ファミリー・ソーシャルワークの理論と技法』の著編者である加茂陽先生に講義していただきました。

 前半は、循環的質問法がなぜ変容技法として有効なのかを理解するために、生活場面の日常会話の性質から講義が始まりました。支援論の土台となるのは、真偽決定をすることができない命題的態度文のクライアントのストーリーを真実として取扱い、単純な質問により命題化し、説明を求めていくことで、もとの命題を維持することが困難となることから、弁証法的に変容が起こるという理論です。

 後半は、質問法をいかに構成し、面接を展開させていくかという視点から事例分析を行いました。質問法のカテゴリー表を用い、実際の面接での相談員(今回の事例ではファミリー・ソーシャルワーカー)の質問が、どういった戦略に基づき、どのような戦術で行われているのか、質問の類型と実際に生じた面接を展開させる力の効果を見て行きました。

 今回の研修で盛り上がったのは、「自分だったらどういう戦術を使うか」という議論でした。また分析によって、普段使いの言葉で質問していながら、戦略的に効果的な質問になっていることがわかり、大変興味深かったです。

 皆さんからは「この面接が変容過程のどこにあたり、戦略の中で今戦術として何を命題化しようとしているのかを意識して、単純な形の質問を心がけたい」、「記号化や類型の使い方がわかった」、「常に前にクライアントが言ったことを文脈として面接を展開させることで、拡散しないということがわかった」、「できれば年度内にもう一回続きをやってほしい」などの感想をいただきました。

 ※自分も必死で学んでいたので、写真を撮ることをすっかり忘れていました。いい雰囲気だったのに、お伝えできないのが残念です。次回は気をつけます。(中)

2014年9月7日(日) 介入技法論「変容の戦略と戦術」

 今回は、解決に向かって面接を進めて行くために必要な戦略の立て方と用いる戦術の具体的な実行について、実際の面接場面で展開された介入を検証する形で学びました。講師は、相談機関、大学、病院、児童福祉施設など、組織の枠組みも対象も異なる現場で働いている専門職に対し、スーパーヴァイズをしておられる加茂陽先生です。

 前半の講義のキーワードは、「遠心性」と「求心性」です。遠心性とは、支援者の介入が戦略を離れ、クライアントのメッセージに巻き込まれ、何をやっているか訳がわからなくなっていくことです。求心性は、戦略に則って戦術が実行され、それにより生じた変容を解決構造から離れないように介入が重ねられ、効果的にクライアントの解決方法を構成していくことです。解決を志向する面接では、常にクライアントの問題構成にズレを発生させ、それを波及させていく「求心性」が求められます。

 頭ではわかっていても、実際にクライアントとやりとりしていると、余計なことを考えたり、考えが足りなかったり、「求心性」を保ち続けることが難しいことは、参加者の皆さんは実感として感じておられます。後半は、その困難さを乗り越えるため、事例検討の重要性が話題となりました。自分の介入の特徴を理解し、「ここでどうすればよかったか」を何度も認識することで、さらなる臨床力の向上につながるということを共有しました。


10月27日(日) 番外編

 10月20日に予定されていた勉強会は私どもの都合で日付と場所が変更になりました。参加申込をされた皆さんには大変ご迷惑をおかけしたのですが、ご協力をお願いして無事実施することができました。

 今回は講師の加茂陽先生が放送大学で講義されておられる『児童虐待問題へのもう一つのアプローチ』を内容とし、改めて問題のとらえ方と解決の方法についてご講義いただきました。

 従来の家族療法のように問題を矛盾増幅過程ととらえ、矛盾を解消しようとする解決方法を取るのではなく、問題はクライアントがある状況を問題とするために、意味づけや行為選択の多様な可能性を失い、矛盾(差異)に目をつぶって、ある特有の解決方法をとり続けることとし、解決のアイデアはクライアント自身に自身の現実構成の矛盾に気づかせ、これまでとは別の意味づけや行為選択の可能性から新たな解決方法のプランを立ててもらい、実行してもらうことになります。

 講義の後のディスカッションでは、「虐待をしている親」という社会的な定義づけを強く受けているクライアントや事象に対し、このアプローチを実践する意義や可能性について意見が交換されました。

 気づけば日が傾き、空には美しい夕焼けのグラデーションが。まさにライフワールド(生活世界)、いろんなことを考えさせられる時間となりました。

 

  8月25日(日) 対人支援論の勉強会を行いました!

テーマは「トラッキングからリフレクションへ」。介入に関する理論と技法を学びました。

 今回の勉強会のテーマは介入。つまり、クライアントの問題解決を推し進める方法について、その理論と技法について学びました。

 午前中は理論編です。前回までの復習をしながら、「最初の訴え」→「トラッキング」→「リフレクション」と面接が展開する過程で、クライアントに起こっていること、支援者に起こっていることを整理し、質問が介入の中心となる理屈について学びました。

 

 午後からは実際に事例を検討しながら、どのような質問による介入を行うか、意見を出し、加茂先生に解説していただきながら理解を深めていきました。

 「例外事象の探求」を用いた場合の展開では、クライアントの現実構成とかけ離れた“例外”に支援者が飛びついてしまう失敗例について話し合いました。加茂先生からは「その場合は、無理やり続けずに、コンプリメントをはさみ、スケーリングに切り替える」という助言をいただきました。

 参加された方が皆さん使いにくいと言われていた「ミラクルクエスチョン」についても効果的な使い方について、丁寧に解説していただきました。

 皆さんからは「後半は頭がいっぱいになった」「実際はまだ難しいが、これらの質問を使いこなせるようになりたい」といった感想をいただきました。

クリニカルソーシャルワーク勉強会のご報告

2013年6月16日(日) 変容を生む仕組み「トラッキング」です。

2013年6月16日(日)

強烈な日差しと蒸し暑さの中、お越しいただいた皆様と、10時から16時までみっちり勉強いたしました。(本当にみっちりがんばりましたよね)

今回の大きなテーマは、「変容を生む仕組みにクライアントの語りを変換する方法編」です。変容を生む仕組みについての理論をこれまでは中心としてきましたが、今回は「頭でわかったことを体を使って実際にやってみよう」という内容です。

 今回特に力を入れて解説をし、演習をしたのは、コンプリメントとトラッキングというクリニカルなスキルです。

 コンプリメントは、クライアントの語りを励まし、問題解決に主体的になっていただくのに役立ちます。自分自身の問題状況の構成について、詳細に語ることを励まされたクライアントの語りは日常の体験から距離を置いた、統制された語りとなります。

 勉強会では、改めてコンプリメントの意義を再確認し、その機能を意識して効果的に用いることの重要性について理解を深めました。


 トラッキングについても、演習とディスカッションを行いました。

 演習後の意見交換では、「具体的場面を選択してもらうのが難しかった」、「どう聞いたらいいかわからなくなった」など、実践の中で体験する困難さについて意見をいただきました。また「体験を文字化するのは、クライアントさんにとっても、私にとっても情報の整理になって、状況を冷静に見る手助けになるのがわかった」、「トラッキングの形式に入れ込んで眺めてみると、やりとりのパターンが見えてくるんだなと思った」など、いろいろ気づいてくださいました。


 「トラッキングの形にした後、どうしたらいいのかわからなかったので、もう一つ別の場面をトラッキングしてしまった」方もいらっしゃったのですが、今回はここまで。トラッキングの後、解決を生成する介入の演習は次回の勉強会で、ということになりました。

 参加された方からは、「コンプリメントについて今まで“ほめる”という意味での肯定的意味づけとしか理解していなかったが、語りを励ますというのがいいと思ったし、その意義が理解できた」、「記録が苦手だったが、記録することや形式に入れ込むことは役に立つんだと感じた」、「自分の経験からついつい思ったことを言いたくなるが、どういうふうに聞いたら、クライアントが自分の言葉で話してくれるか、質問を考えながら面接するのが難しかった」といった感想をいただきました。

 参加者の皆様が、少しずつ学習の深まっていく感じを持っていただけたのがうれしかったです。(報告者:中)

今回も白熱しました。(2013.04.14)

 リプルでは、2013年4月14日(日)に、包括的対人支援論の勉強会を実施しました。

 今回の参加者は10名で、従事されておられるお仕事の内容も領域も様々でした。

 写真は、勉強会が終わってホッとされた皆さんのご様子です。

 今回のレポーターは、SSTの実践やリプルの運営に深く関わってくださっている金丸真実さんです。

  414日(日)、今年度最初の勉強会が開催されました。講師として県立広島大学名誉教授の加茂陽先生をお招きし、包括的対人支援論の概論と、実践のための事例検討を行いました。

 前半は、加茂先生より、具体例をおりまぜながら、問題解決のための手立てについて基本となる考え方を説明していただきました。ここでは、「クライアントが訴える問題をどのように捉えるか」「クライアントの訴える問題を解決可能な形にするために、どのような質問技法を使うのか」ということを学びました。

 参加者からは「クライアントとして保護者が面接に来られたが、”子どもが変わらないと問題の解決につながらない”と考えている場合、どうしたらいい?」とか、「子どもが面接の中であまりしゃべらない場合、どう対応すれば…」といったような質問が活発に出され、大いに議論が深まりました。

 後半は、事例検討が行われました。ここでは参加者の方々に、クライアント(問題解決を求めて来談された人)とIP(問題とみなされている人)の「言動(行為選択)」と、その言動に対する「意味づけ」を整理して、書き出してもらうという作業を行いました。その作業を通じて、クライアントとIPとのやりとりの中で、どのようなパターンがあるか捜していきました。その結果、この事例では「IPの言動に対するクライアントのネガティブな意味づけ・行為選択を変える」ことと、「IPの言動に対するクライアントのポジティブな意味づけ・行為選択を強化する」という二つの介入ポイントが導き出されました。

 今回の勉強会は、積極的に質問や意見が交わされたことで、難しい議論の中にも和気あいあいとした笑いの多い勉強会になりました。「面接者は口を動かさず、頭を動かす」という名言も飛び出し、考える、発言する、笑う・・・という充実した時間となりました!

(金丸真実)

 

  これは事例検討のワークで、クライアントの語りの中から「行為選択」と「意味づけ」を書き出していったものです。3名の方が代表でそれぞれ書いてくださいました。

 初めは「これでいいかわからないし…」と困っておられたのですが、書き出していると加茂先生からヒントやアドバイスがこっそり伝えられ、「なるほど」と理解が深まった様子。他の参加者の方からは「いいなあ」「私も立候補すればよかった」という声が上がっていました。


2013年2月3日の勉強会の様子

 2013年2月3日日曜日、冬と春を分ける節分の日を丸一日使って、包括的対人支援論の勉強会を開催いたしました。

 参加予定者のうち2名の方がインフルエンザで欠席となりましたが、8名の方がご参加くださいました。(いよいよ流行りだしましたね。皆様も気をつけてお過ごしください。)

 今回の勉強会では講師として、家族支援の専門家であり様々な領域の現場でスーパーバイザーをされておられる加茂陽先生(県立広島大学名誉教授)をお招きしました。

 午前中の概論では、クライアントの訴えを仕分けするのに役立つ「枠組み(理論)」について学びました。普段業務に追われて、久しぶりに「勉強する」という方もおられましたが、複数の方向から例を示して説明していただいたので、“意外と”わかりやすかったというご感想を多くいただきました。

 午後からは実際の事例をもとに、変容を引き起こす支援技法について学びました。これまでの支援の中で使われてきた「受容と共感」「傾聴」と、ここで提示された「記述を引き出す手法」との違いなど、参加者からの質問や気づきによって議論が深まり、後半の事例検討に十分な時間を取ることができないくらい盛り上がりました。

 参加者の皆様からは「この方法を使って、実際にどのような言い方をしているかがわかって勉強になった」、「自分でもできるようになりたい」、「思ったよりわかりやすかった」、「まだちゃんと理解できていないので、また勉強したい」などの感想をいただきました。

 参加された方が元気になって帰って行かれたのが、本当に嬉しかったです。リプルの勉強会の目的にかなった時間となりました。(報告者:中)

(↑上)語られた出来事を仕分けする作業をしています。

「もやっとした絵を点描式で描きかえる」、そんなイメージです。仕分けができると取り組める介入ポイントがいくつも浮かび上がり、やりやすいところを選ぶことができます。

 

(→右)クライアントの変容力を引き出す力をもった質問の具体例です。これが使いこなせるようになることを目指します。


(←左)私が持っている黄色い紙は、事例検討会の案内です。ホームページ上に載せておりますので、ぜひご覧ください。

 

(カメラが近いって)